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板橋区のウクライナ避難民の方々をジョージア国立バレエ公演にご招待しました

2025年1月6日

2024年12月27日、東京文化会館にて板橋区在住のウクライナ避難民2名の方を歌舞伎座にお招きし、バレエ鑑賞会を実施しました。

  

 

今回の演目はチャイコフスキーの「くるみ割り人形」、ジョージア国立バレエ団ことザカリア・パリアシヴィリ記念ジョージア国立トビリシ・オペラ・バレエ劇場のバレエ部門による上演です。そもそも、旧ソ連圏の「バレエ」は、日本の歌舞伎同様、建築としての劇場がありそこに付属するバレエ団になります。オペラも同様で、固定の上演場所があってのオペラカンパニーなのです。旧ソ連圏では、劇場は街づくりに大きな役割を果たしてきました。都市が作られる際、劇場建設は必須で、国民の娯楽の場所として劇場は生活に根付いてきました。「ソ連時代に働いていた頃、バレエやオペラのチケットを職員に売る担当者がいました。この人から買うと劇場で買うより少しお得なんです」と今回ご参加のウクライナ避難民の方。ソ連時代、ソ連崩壊後も、劇場のチケットは比較的廉価で販売されていました。ロシアを始め、旧ソ連圏で舞台芸術への関心が強く、バレエダンサーの層が極めて厚いのはこういった社会背景がありました。

 

「くるみ割り人形」は、ロシアの作曲家ピョートル・チャイコフスキーが作曲、台本はマリウス・プティパ、振り付けはレフ・イワノフで1892年12月にペテルブルクのマリインスキー劇場で上演されました。ちなみに、2018年、松竹近松座もこのマリインスキー劇場で歌舞伎公演を実現し、私も通訳人兼なんでも屋として日本から同行させて頂きました。時の重厚さを纏う、大変豪華絢爛な劇場です。ロシアバレエといえば、マリウス・プティパのコレオグラフィーなのですが、今回はジョージア。芸術監督のニーナ・アナニアシヴィリにより、ロケーションも登場人物も全てジョージアになりました。この変更は、全く新しい「くるみ割り人形」となり、観客としてジョージアのテイストを楽しむことが出来ました。今回の参加者の方も「ねえ、あれはジョージアのダンスの振り付けですね!」と上演中ささやいてくれたほど。舞台装置、振り付け、衣装に至るまでコーカサスの雰囲気が醸し出され、文化の翻訳が徹底した公演でした。現在のジョージアとロシアの緊迫した関係性を鑑みれば、これが現実なのでしょう。

 

 

クリスマスの夜が舞台の「くるみ割り人形」は、日本で言えば「忠臣蔵」よろしく12月、あるいは年末の演目です。ウクライナでも年末に上演されるバレエとして名高く、誰でも年末を想起させる一作であり、今回この公演にお招きした趣旨は、故郷での平和だった年末を思い出して楽しんで頂くことです。「今回、初めて日本の立派な劇場でバレエを観られて大変良かったです。この劇場のファサードはキーウにある『芸術宮殿』を思い出させましたよ。それこそ、ウクライナという名前で…懐かしい」とその建築の写真を見せて頂きましたが、確かにコンクリートの東京文化会館と雰囲気が似ています。「日本でバレエを観たことは一生の想い出です」。

 

ジョージアと言えばチーズパン・ハチャプリ。しかし上野にジョージア料理店はないので、観劇の後は私達一行はイタリアンレストランでハチャプリ代わりにピッツァを齧り、イタリアンワインを飲み、この舞台の余韻をそれぞれの胸に抱きながら、和平の実現しなかった過ぎ去る2024年を見送ったのでした。

 

 

株式会社日露サービス

代表取締役社長

野口久美子

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