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追悼 源貴志先生

2024年1月5日

源貴志先生(早稲田大学文学学術院教授)が、2023年12月15日にご逝去されました。

 

突然の訃報は、私達教え子を打ちのめし、年が明けました。

 

源先生は、私が大学1年生の頃のロシア語文法、3年生の頃の文学翻訳の授業等を受け持って下さいました。ワレーリー・ブリューソフ「フラット(Бемоль)」の翻訳を見ていただいたことは、今でも鮮明に覚えています。私達よりひとまわり上だった源先生は、「インテリのお兄さん」然とされていて、学生に慕われた先生のおひとりでした。

 

私が親しくさせて頂き始めたのは、大学をとっくに卒業し、ハバロフスク、モスクワ、ハイデルベルクを経て東京に戻ってきた15年程前のことです。東京でぽつぽつとロシアがらみの仕事をするようになり、同級生達と食事会をしたり、仕事の相談や、ロシア語の出来る在校生を通訳として紹介して頂いておりました。当時の勤め先の上司と険悪になってつらいと相談した折、「…そんな人、知らん顔してなさい」と仰ったので、知らん顔=無視(!)と理解した私は、当該上司を悉く無視し、騒ぎになったものの、彼は更迭され私の前から消え失せたので、とどのつまり源先生の助言は正しかったのでした。会社を作ってからも、露文の後輩のイベントで事業の発表するように勧めて頂いたり、同級生たちと食事会をさせて頂いた楽しい記憶が寄せる波のように去来します。

 

最後にお目にかかったのは、2023年の秋で、源先生の還暦祝いとして同級生達と会食をした時でした。夏のお疲れで脚を患われており、松葉杖をつかれていたので、ご自宅までタクシーでお送りすることにしました。車中、なにくれとなく合宿などのお話などされていました。お家の門までお送りし、ではまたと車に乗った後、振り返ると、先生はお家に入らずいつまでも車を見送ってくださっていました。あれがこの世でお目にかかる最後であったと、誰が想像できたでしょうか。

 

後輩たちをあたたかく見守り、ロシアと旧ソ連に関わるドアを開けるための鍵をお贈り下さった、感謝してもしきれない、大変素晴らしい先生を失ったことが未だに信じられないままでいます。

 

源先生のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。

 

株式会社日露サービス

代表取締役社長

野口久美子

 

 

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