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5年間を振り返って

2023年10月31日

  

弊社は2023年10月31日で創業より丸5年が過ぎました。

  

創業当時2018年は、折しも「日本におけるロシア年」「ロシアにおける日本年」で、日露間には多くの行事やビジネス交流が行われていた時代でした。私も農業関係のプロジェクトや、そのメインイベントである歌舞伎の訪露公演の通訳・事務局担当の仕事を請け、2017年の企画段階からモスクワとペテルブルク公演まで伴走させて頂いたのは、大変良い思い出です。劇場にみなぎるロシアの観客の熱狂が、今でも思い出されます。

  

2019年夏は、北方領土ビザなし交流の通訳者として、はじめて国後島と色丹島に滞在する機会を得ました。波打つ夜の色丹沖で多くの海鳥が波間に眠る様は印象深く、この地域の自然は確かに大きな価値がありました。日露間の枢要な課題である領土問題のありのままの姿は、思った以上に複雑であり、錆び付いたこの関係を動かすのは誰にとっても非常に厳しいと感じながらも、ささやかな期待をしておりました。2019年以降、訪問団は行っていません。あれが最後であったと思い出すことになるのでしょうか。

 

2022年春までは、日露間は未曽有の大きな可能性をはらみ、私がロシア文学に関心を持った1989年頃から最大のピークを迎えていたと断言できます。しかし、戦争で状況が変わり、旧ソ連のほかの国々とのビジネス交流を拡大する必要に迫られました。さらに、対露外交を革新的に推し進めた政治家も急死し(現在の日本政府にはロシアとのパイプはもう殆どありません)、ロシアが北朝鮮と親交を深めれば深める展開になるほど、日本との溝はもう戻れない程に深まっていくでしょう。この点においては、希望は殆どなく、非常に厳しい状況を迎えてしまいました。

 

一方、ウクライナは日本社会にとって外交上非常に重要な国となりました。今日、チェルノブイリ原発事故を鑑みても、ウクライナの国民がこれほどまでに長期にわたり国を脱出せざるを得ない状況は、スラヴ圏の歴史上、異常です。これまで接点が多くなく、距離的に遠かったこの国とどのように関わっていくかは日本社会にとって大きな課題となりました。現在、弊社が積極的に取り組むウクライナ避難民支援は、ロシア・旧ソ連について専門的に学んだ者の責務として、果たすべきものだと考えております。おかげさまで、料理教室の受講生様、ロシア語・ウクライナ語レッスンの受講生様、3月に表彰してくださった板橋区文化国際交流財団様、通訳や翻訳を依頼してくださるクライアント様の温かい応援のもと、継続しております。改めまして厚く御礼申し上げます。

 

その他の今期の印象深い出来事としては、大叔父池田林儀の研究をされている、ジェニファー・ロバートソンミシガン大学名誉教授が我が家を訪問してくださったこと、キルギス共和国首都ビシュケクを視察し、知人である元副首相と再会できたこと等があげられます。様々な国の方と出会い、過ごした楽しい時間は弊社の財産です。

 

旧ソ連と一口に言っても、それぞれの国に多様な文化と慣習があり、これらを知りながらビジネス交流を続けていくことは、簡単なことではありません。しかし、私達はあらゆる状況は常に悪化するものではなく、また好転する時期が来ることを確信しています。「疫病と戦争」という、世界史の教科書のヨーロッパ史の一ページのような展開をこの数年で経験してきた訳ですが、今後とも倦むことなく、希望の灯を携えて歩み続けていきたいと考えております。

 

この5年の月日でお目にかかれました皆様に心より感謝申し上げます。

 

株式会社日露サービス

代表取締役社長

野口久美子

 

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