お知らせ news

6期目を終えて

2024年10月31日

2024年10月31日、弊社はお陰様で6年目を無事終了する運びとなりました。2018年の創業以来、様々な出来事がございましたが、6年も会社の経営を継続させることが出来ているのは、ひとえにフリーランス時代よりお付き合いのある仲間、友人、クライアントの皆様、新しく弊社のサービスをご利用いただいた皆様のお力添えの賜物です。いつも誠に有難う存じます。

  

今期は、早稲田大学でロシア文学を学んでいた頃の恩師・源貴志先生の御逝去が2023年12月にあり、大きな喪失感をまとう1年でございました。結局のところ、源先生に御恩返しをするような段階にもなく、御助言を頂くことばかりだったことを、今も大変残念に思うばかりです。

 

2024年3月には、板橋区在住のウクライナ避難民の方3名を歌舞伎座にお招きし、「日本文化理解の会」を実施いたしました。「菅原伝授手習鑑 寺子屋」「傾城道成寺」「御浜御殿綱豊卿」の三本を吹き替え・字幕翻訳なしで、劇場でじかにご覧いただく、というイベントです。あらすじは事前にウクライナ語翻訳を御用意させて頂きました。日本人でも難解な歌舞伎ですが、時の風化に耐える本物の舞台芸術は、一度は歌舞伎座で観ていただきたいと考えておりました。私自身、2018年にロシアでの歌舞伎公演のお仕事をさせていただいたことがあり、今度は日本とウクライナの文化交流の一助となれば、との思いでした。幸い、今回ご参加のウクライナ人の皆様には大変好評を博したことは、嬉しく存じます。

 

毎度おなじみの「ウクライナ避難民の方によるウクライナ家庭料理教室」は、5月に20回目を迎えることが出来ました。2022年9月からこれまで教えて頂いたメニューをあげてみましょう。まずはボルシチは4回、チキンキエフ2回、プロフ2回、豆と豚のスープ、鶏肉とキャベツの蒸し煮 とマッシュポテト、夏野菜のソテー、赤ピーマンの肉詰め、ペリメニ、茄子と鶏肉のスープ、ブリヌィ、ワレーニキ、ウハー、ガルプツィ、ズッキーニとピーマン(パプリカ)肉詰め、ウクライナ風肉じゃが…。ちょっとしたレストランのメニューの数になっております。11月も2回予定しており、次は何が食べられるか、とても楽しみなところです。参加者の皆様が、主たる講師のヴェーラさんと楽しく調理し、異文化の食生活に触れて頂けることを嬉しく思っております。

 

また、8月はスポーツ大会の案件で、旧ソ連のモルドヴァ共和国を初めて訪問できたのは、忘れがたい大きな経験となりました。戦火と破壊に苦しむウクライナの隣国であり、沿ドニエストル共和国を擁する国家として、モルドヴァもまた厳しい状況のただなかにある国の一つです。百聞は一見にしかずとはよく言ったもので、首都キシナウは大変美しく、素晴らしいワイン産業を有する場所でした。訪問したワイナリー「ミレシュティイ・ミチ」の地下80メートルのワイナリーには、モルドヴァにある7つの地震計の一つが設置されており、モルドヴァも地震国であったと知った次第です。まだ日本人にとってはなじみの薄い国ですが、一度訪れてみれば、非常に興味深い所です。人生の意外な贈り物、といっても過言ではありませんでした。

 

世界の多くの国々と地域で「分断」が露わになっていますが、旧ソ連圏も例外ではありません。ロシアとウクライナの戦争は言うまでもなく、6月にはアルメニアがCSTO集団安全保障条約から脱退しました。ジョージアではLGBT反対法案が可決され、10月26日の議会選挙における不正の有無は、社会を揺るがしています。比較的自由な国であったはずのジョージアも変化と分断の波が訪れています。彼らは欧州連合との協調は、一層厳しいものとなりました。

 

日本においては、ロシア経済分野担当大臣のポストが、新内閣においてはなくなりました。残念ながら、日露関係の停滞は、あらゆる分野において、10年、20年というスパンという観点で継続するように思います。むしろ、2022年までの数年間が日露の歴史上非常に珍しい時期だったのでしょう。他方、東アジアの安定と平和は日本にとって最も重要なベクトルの一つであり、そのためにも、ロシアとの細くとも継続的な関係は非常に重要であると考えます。日本と北朝鮮との関係を例にとれば、殆ど接点がありません。そうなってしまうと様々な交渉や取引以前に往来もないわけで、ロシアとこれに近い関係になるのは、将来的に望ましいことではないと考えております。だからと言って、大きすぎる犠牲を払い続けるこの戦争を容認することとは、話は別です。

 

ここにすべてを記すことは難しいのですが、今期も様々な方々とお目にかかることができ、印象深い出来事に恵まれたことは、弊社の発展を後押しするものとなりました。戦火の止まない厳しい時代の中ではありますが、一刻も早いウクライナにおける平和の実現を祈り、日本社会に貢献できる事業を倦まず弛まず継続して参ります。

 

株式会社日露サービス

代表取締役社長

野口久美子

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