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北方領土をめぐって

2019年1月25日

先日、日ロ外相会談、日ロ首脳会談が終了しました。
御存じの通り、平和条約締結は、日本側にとって大きな関心の的です。

 

一方、ロシアのそっけなさ振りが目立っています。これにはロシアの国内事情が大きく関わっています。

 

2018年、ロシア国民を揺るがす年金政策がとられることが決定しました。年金受給年齢の変更です。日本同様、労働人口の減少に伴い、男性は60歳受給開始が、世代によっては段階的に65歳になり、女性は55歳受給開始が、同様に60歳になります。しかも、1932年以来の変更で、国民のほぼすべてがこれまでに経験しなかった社会的変化です。これに反対する国民は多く、さらに追い打ちをかけるのが、付加価値税という日本の消費税に当たる税金が、2019年から18%から20%になったことです。食品や生活必需品にも適応されるため、ロシアのメーカーはいかに価格に乗せずに乗り切るか、頭を悩ませています。

 

ロシア国民にしてみれば、年金受給年齢のひきあげに増税、さらに、たとえ東のさい果ての行ったことも無い場所だとしても、領土を減らすとなれば、政治に対する決定的な不信と反感を増幅させます。2019年の始まりは、まさにロシアと政治的な駆け引きをするには最悪のタイミングでした。

 

今回、プーチン大統領の発言にあった「両国民が納得するものではならない」には、まさにこういった背景にいるロシア国民の正直な心情を顕しています。経済交流を強く強調するのも、経済関係を突破口として、世界的な問題が生じた時にも日本を味方につけられる非常に強い同盟関係を築きたいのでしょう。日本は、やはり強力な国家なのです。

 

しかし、かつてロシアはノルウェー、中国とも戦後随分経ってから領土問題を解決しています。特に、中国とは密接な関係ののち、解決に至っていますから、関係を構築してお互いを知るというのは、ある意味、効果的です。個人的な経験で恐縮ですが、ロシアと付き合う上で、反日的な態度を取られた事や、女性に対する侮蔑的な対応もありませんでした。日本にとっては、意外な良い友人になる可能性はあるのです。

 

多くの人が、日本政府の姿勢を批判していますが、私はこのような外交的取り組みに、歴史的な大きな意味があると考えています。これまで、どの時代の政権も、これほどロシアと真剣に対話しようとしたことがありません。初めての取り組みは、なんにせよ、困難はつきものです。

 

 

 

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