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新しいビジネスを展開させる時

2018年7月12日

この数年、私は農業プロジェクトのロシア展開ビジネスに参画していた。非常に面白く、非常に日本での研究も盛んな分野である。
一連の経済活動を通し、気づいた点がいくつかあり、それをここに述べたいと思う。

1. パートナーの熱意をはかる手間を省いてはいけない。

パートナーと言っても、投資家としてのパートナーと実務を行うパートナーの二点でこの二つが別々であることがある。いずれにしても、自分で直接彼らと接触し、その考えを分析し続けない限り、プロジェクトは進展しない。誰かの紹介で知り合うことが殆どだが、紹介者は紹介しただけで、その後、何の音さたもなくなることは多々あり、パートナーとの信頼関係を自力で構築しない限り、ロシアにおけるプロジェクトの成功は遠い。

パートナーが、どれだけこのプロジェクトに真剣に取り組んでいるか、投資の規模、ロシア社会における有用性への意識、常に彼らの体温を測り続けるのは、非常に手間がかかる。特に、ロシアにおいては、組織全体よりも、個人に対する関係性が重視される。実は、意外と単純なポイント、誠実さ、快活さ、感じの良さ、相手の質問に明確に回答する姿勢が、次のステップを呼び込むように思う。早く契約に持ち込みたいけれど、長い付き合いになる場合、相手をよく理解する手間を怠ってはいけない。

ロシア語は、出来すぎて損をすることはない。この世に「~すぎて損をする」ことのないものがいくつかあるけれど、語学はその一つであるように思う。英語での交流は、初期段階において有効であるが、長く続かない。ただ、同時に分析する手間をかけなくては、ただコミュニケーションの上手い人で終わってしまう。

2. ロシア事業は常に政治の風に晒される。

ロシア政治というと、日頃、政治になじみのない層にとっては、大変難しい話の様に思える。しかし、日米関係、日露関係、露米関係の都合上、ロシアとのあらゆる関係は常に国際政治の風に煽られている。それゆえ、安定したビジネスになりにくく、日本側の手が出しにくい一因となっている。日本人にとって、他にもっと楽に商売の出来る国はある。

ロシア側関係省庁のメンバー等、関連する人々のバックグラウンドや経歴は、知っていたほうが良い。また、大統領よりも、主に内政を担当する首相のスピーチ等に、今のロシア国内でどのような経済的テーマが重視されているのか、述べられていることがある。ロシアの国営メディアに勤めていた経験上言えるのは、報道は常に綺麗に編集される。それぞれの組織の公的発表の方が、有用な情報が含まれていることが多い。

政治の動向や、現在行われている政策の内容にもともと関心のない人には、ロシアとの事業は辛いものになるかもしれない。

3. 悪いのは誰なのか

とかくロシアは、悪役扱いされがち。しかし、プロジェクトの遂行の過程において、実は日本側に問題のある人物がいたので、厳しい局面にさらされるということがある。野心のありすぎる人間、無知な人間、決定の遅い人間…こういった人々に悩まされることが多々ある。決して「いつも厄介なのはロシア人」ではない。

4. ロシアでの事業化は入念な準備の下においてのみ成功する。

一見、非常に面白く、社会に有用でありそうな産業であっても、事業計画通りに行くことがない。日本でその分野の研究が進んでいたとしても、それをロシアで事業化するのは本当に難しい。その分野の専門知識の足りない人間が、一端の研究者のふりをしてまぎれこむこともあり、事業はやはり企業が主体でやるべきである。唯一成功に近くなるケースは、日ロ双方に非常に熱心で、プロジェクトに寄り添い続けられる人間がいる場合だけである。綿密な計画と熱心なメンバーがいれば、船出は明るい。しかし、長く生き残る事業にするのは、本当に厳しい。この20年を顧みて、税金の投入がない、細々とでも生き残っている日露のプロジェクトは、いったいどのくらいあるのだろうか。90年代、2000年代、次々につくられた合弁企業も、今は跡形もない。短命に終わりがちであることを念頭に置いて、悲観的に計画を立て、楽観的に実行するのがよい。

結局のところ、ロシア・プロジェクトに限らず、仕事は従事する人の能力と人柄(後者は大きい)により、大きくその結果が変わることをつくづく感じる。このテーマは、引き続き折に触れ考えていきたい。

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