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タシケントのおっさんより愛をこめて

2017年4月27日

インターホンから郵便局の配達を知らせる声がした。はいはい、印鑑ねと玄関に出る。ネットショップで何を注文したのか思い出せない。ドアを開けると、渡されたのは布に包まれた大きな箱だった。御丁寧に、そしてクラシックに、蝋で封かんがしてある。「ウズベキスタンからですよ」配達員のおじさんは、意外そうな声で答えたのだが、意外だったのは私も同じ…。

 

段ボールにまた段ボール、粗末な綿や新聞にくるまれて出てきたのは、ウズベキスタンの伝統柄のティーセット。藍色と銀の縁取りがとても綺麗!ウズベキスタンはコーヒーよりもお茶文化。特に素焼きに着色した青と緑の焼き物は、ロシアとはまた違う陶器文化を感じさせます。でもこれはもっと高価そうね…。

送り主を見れば、アームレスリングの大会でいつも顔を合わせるウズベキスタンの事務局長・クルバン。

クルバンのヤツ…。こいつはとにかく油断できない…。そうか、あいつか…。

 

昨年、ウズベキスタンの首都タシケントでアジア選手権が開催された。

ウズベキスタン連盟が夕食会を催して下さった。それは民族色豊かで楽しい一夜。おいしいウズベク料理に舌鼓を打ち、ウズベキスタン風に輪になって踊る。ああ、日本人って皆で踊る習慣がないから、私達は壁の花…。

ところが、そこにしつこくダンスに誘ってきたのがクルバン。トレンディエンジェルの斉藤司氏そっくりの風貌な上、厚かましい笑みで誘ってくるのだが、中央アジア=誘拐婚というこれまた失礼なイメージを有していた私は、頑としてこのウズベク人を忌避したのであった。

 

そして昨年のブルガリア世界大会。

再会を果たしたウズベキスタンの斉藤司氏、「くみこ~!」

呼び捨てにしないで!!!!

「ところで、俺んとこさ嫁にこねーが?一番目の奥さんと別の家、ちゃんと用意すっがら…」

「…ごめんなさいね、私ね、夫がいるの」

「俺も結婚してるがら~!イスラム教だがら、4人まで奥さんOKよ!!大丈夫!!」

大して親しくもないのにプロポーズするこの勇敢さをほめてやりたいが、非ムスリマに手を出そうとするのが厚かましい。

 

そして今年のはじめ、斉藤司氏はいきなり「うちの国の選手連れてぐがら、日本で親善試合すっぺ。ビザ出して」と連絡をよこしてきた。真面目に我が国と交流するつもりなのね、ならいいわよ、受け入れを手伝うわと思った矢先、「くみこにお土産あるがら。サマルカンド(ウズベキスタンの古都)の指輪!サイズあうどいいんだげど~!!」。

 

こいつはフザけている。

「指輪?私にくれるならダイヤモンドのこってりついてる、そうね、2キャラットはないと駄目よ。そうね、サマルカンドを私に献上してくれる?名前を変えてクミコグラードにしてね」

「まだまだ、照れて~!」

しつこいのはこいつだからか、ウズベク人だからなのか、よくわからないのだが、かくて神は私に味方した。なんとビザ発給の為に送った書類が非常に遅れたので、結局斉藤司は来日できなかったのである。

 

斉藤司にさしあたり御礼のメッセージを送った。

ありがとう、食器届きました。

「クミコ~、食器割れずに届いてよがった!いづか日本さ行くから待ってて~!」

日本とウズベキスタンの平和のためにしばらく、来なくていいわよ!!

ロシア人はともかく、中央アジアの人々との交流は、また異なる異文化交流なのでした。

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