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板橋区より区民文化奨励賞を授与されました

2023年1月25日

この度、弊社の「ウクライナ避難民の方によるウクライナ家庭料理教室」の活動に対し、公益財団法人板橋区文化・国際交流財団より令和4年度の「区民文化奨励賞」を頂きました。

 

この賞は、文化・スポーツ・国際交流の各分野で功績をあげた板橋区内の個人・団体に対して贈られるものです。私達のささやかな取り組みは、この賞に値するのか心許ないのですが、大変有難く、同時に強く励まされる思いでおります。

 

2022年9月に始めたこのワークショップは、現在5回実施し、次回2月に6回目を行う予定でおります。これまでに習ったメニューは、ボルシチ、キエフ風チキンカツ、オデッサ風魚のスープ、ロールキャベツ。どれも教えて下さった方々の温かな家庭の中で育まれた、エピソードのある美味しいお料理でした。私にとっては、どのメニューも初めて食べる物ではありません。ロシアで食べ慣れて来た「旧ソ連の味」です。しかし、同じメニューであるはずなのに、眼前に立ち現れる差異は、昨日まで戦争などなかった両国の途方もない断絶を突き付けられました。

 

知った様にこのワークショップでロシア語通訳をしていますが、私は実はウクライナを訪問したことがありません。ウクライナ人あるいはウクライナ系の友人は、います。文学の世界でも通訳業でも、ウクライナは身近でした。キエフ公国はまさにスラヴ文化の故郷。訪問したこともないのに近しい国、それが私のウクライナです。何故、行かなかったのか。それは「いつでも行ける国」だったのです。ビザの必要なロシアと異なり、航空券さえ買えばすぐに行けたのです。そのうち行くつもりの場所だったのです。戦争が世界を狂わせた今、この読みの甘さを非常に後悔しています。

 

ロシア文学やロシア国営ラジオ局等における様々な経験は、私の人生の財産でした。モスクワの日本大使館の建設プロジェクト、2016年の日露首脳会談。印象深い仕事の数々が、戦争と共に「思い出」になってしまいました。しかし同時に、ロシアと日本の関係が悪化しても、これらの経験は旧ソ連の別の分野・地域でも有用なものであると判明したのです。ここにロシア語で繋がるソヴィエト連邦という共同体の根深さと影響力を感じずにはいられません。崩壊後30年が経過し、ソヴィエト連邦の古き紐帯がかくも人々を苦しめる事を、誰が想像できたでしょうか。私は大叔父の代からこの地域に関わってきたいち日本人として、ふわふわしたものではない、実体の伴うプラクティカルな支援をしようと決め、このプロジェクトを立案しました。

 

このワークショップに参加して下さった全ての避難民の方々、日本人の皆様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。この企画にのってくれる方がいなければ、このワークショップは実現しませんでした。

 

また、板橋区文化・国際交流財団の皆様のこのプロジェクトへの御理解に、深い感謝の意を表します。有難う御座いました。

 

株式会社日露サービス
代表取締役社長
野口 久美子

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