エトロフ♥ストロベリー«Fragaria iturupensis»
2021年11月24日
ロシアでいちごを栽培している、という話をすると、大概の日本人には「あんな寒いロシアでいちごが育つんですか」と怪訝そうな顔をされます。いちごはもともと低温期間での休眠が必要な、寒さに強い植物ですし、2019年のロシアの年間いちご生産量は、日本のそれを越えています。
北方領土・択捉島にはいちごのゲノム研究上、大変珍しい野生のいちごが生息しています。学名はFragaria iturupensis。”iturup”は択捉のロシア語読みです。さしずめ、エトロフ・ストロベリーでしょうか。この種の染色体は56本(8倍体)ですが、アメリカ大陸以外で発見された唯一の8倍体の野生のいちごと考えられています。択捉島の阿登佐岳(あとさだけ)の東斜面標高600メートルの辺りに生息しています。阿登佐岳はロシア語ではAtsonupuriと呼ばれている火山です。
1973年、世界で初めてドイツの植物学者Staudtがこのいちごについて学術発表をしました。その後、2003年8月、ロシアのSabitovとアメリカのHummerがさらに現地調査を行い、その存在を阿登佐岳で確認しました。彼らの研究では、1929年、Fragaria iturupensisはすでに日本人によって標本が作られていたことに言及しているのは、日本人として大変興味深いポイントです。
荒涼とした石と砂地に育つこのいちごは、1.5cm程度の可愛らしい丸い姿をしています。その控えめな姿とは裏腹に、唯一のアジア原産の8倍体の野生のいちごという重要な意味を持っています。
1929年に日本人が標本にし、2003年にロシア人が存在を確認しているFragaria iturupensis、日露交流史のユニークな果実でしょう。苗が手に入れば、弊社の温室でも栽培したい所ですが、温室でぬくぬく育つより、火山の石と砂地を愛する逞しい種のようです。
ロシア極東でいちごを栽培し、北方領土を訪れたことのある日本人としては、いつの日か調査チームを結成し、見に行きたい種のひとつです。そしてその頃、択捉島をとりまく政治的環境はどうなっているのでしょうか。
- 板橋区より区民文化奨励賞を授与されました
- Happy Holidays! 2022年の終わりに。
- ウクライナ避難民による家庭料理教室第5回を実施しました
- 年末年始休業のお知らせ
- ウクライナ避難民の方による家庭料理教室第4回を実施しました
- 弊社のいちご温室栽培に関して
- 第5期を迎えて
- 戦争開始から初の世界大会 トルコで2022アームレスリング世界選手権
- 10/1付東京新聞朝刊とWEBでウクライナ避難民の方による家庭料理教室について報道されました
- ウクライナ避難民の方による家庭料理教室第3回を実施しました
- ウクライナ避難民の方による家庭料理教室第2回を実施しました
- ウクライナ避難民の方による家庭料理教室第1回(試験実施)を実施しました
- Вакансія для біженців з України
- トルストイと幸福、広島平和記念日
- Вакансии для украинских беженцев ウクライナ避難民のための仕事
- 追悼 安倍晋三元総理 日ロ関係の分岐点で
- 日本語とウクライナ語とロシア語の間で ウクライナ語翻訳雑感
- キルギス共和国特命全権大使による講演会のお知らせ
- ウズベキスタン サマルカンドは星と出会いの街
- 日本外務省職員をかたる不審な連絡について
- ハバロフスクいちご温室 いちごの販売がスタートしました
- ハバロフスクいちご温室 ファースト・ストロベリーの日
- 4月25日付東京新聞朝刊で弊社のウクライナ語レッスンに関して報道されました
- 4月7日付東京新聞夕刊で弊社に関して報道されました
- 在京キルギス大使館を訪問しました
- ヨーロッパで避難中の日本語・ウクライナ語翻訳者が仲間入り
- ウクライナ語翻訳承ります
- 1998
- ロシアとウクライナに関して
- 日獨旬刊社 異文化理解と協力のスピリット