ハバロフスク
2016年3月1日
日本から空路たった3時間のところに、アムール川の美しいハバロフスクという街があります。大学を卒業した年の秋、私はこの街のロシア国営放送のアナウンサー兼翻訳員として、勤め始めました。普通のロシア人の様に、ロシアの通貨で給料をもらい、アパートを借りて暮らす生活は、その後二度と訪れることのなかったスリルと解放感と出会いに満ちていました。ロシア文学を専攻した、当時24歳の若い女の子には十分すぎるほど、(あらゆる意味で)刺激的な設定の街でした。
それから20年近くの時が流れ、あるプロジェクトで再びこの町を訪れています。
かつての友人たちは一様に年を取り、すでに鬼籍に入った人もいます。すでにこの街を去った人々もいます。教会などほとんどなかった街には、真新しく荘厳な聖堂がいくつもでき、かつてはコムソモール広場と呼ばれた広場も大聖堂広場に。道端で素朴で嵩のある花束を売っていた老女もなく、市民の装いも、どこか見慣れた垢ぬけ方です。
でも何も変わらないのは、アムール川。中洲の遥か彼方には中国が横たわる、それは大きな河。水平線の向こうへと沈む金色の夕日は、あの頃のままです。
アムール川なんて聞くと、”amour”と素敵に勘違いしてくれて、愛の河?ロマンティックだね?なんて聞き返す人もいますが。いえいえ、ツングース語族の語でamar, damur からきてるそう。文字通り、「大きな河」という意味。
ラジオ局の翻訳室の窓からは、いつもこの河が見えました。真冬には自動車がスピンしていくさまも見えます。この出張で一緒に来ている人たちからすれば、退屈な田舎町かもしれません。でも、私には流れた時間を確認する小さな儀式のようなひと時でした。
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