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外国語の上達法

2018年7月13日

自分の職業について触れる折、よく聞かれるのが「どうやって語学力を維持するのか」。マイナー言語の専門家であれば、常に尋ねられる質問のひとつではないだろうか。

実は、実に簡単だったりする。毎日、あるいは一日おきでもよいので、その言語に触れ続けることである。また、自分がその言語をどうしても使わざるを得ない状況をひねり出し、使い続けることである。語学の習得は頭の良しあしなどあまり関係なく、単純に繰り返せば、そのうち、仕事で使うレベルに上がってくれるのだから、勉強して損はない。たいていの人は、それを続けないだけで、続けさえすれば、来年の今日、あなたは素晴らしいレベルに達している。それに、ロシア語が出来るよりも、世の中にはもっと素敵なことはたくさんある。外国語が出来なくても、誰からも責められることはない。

そして、ここから先が難しい。母国語で出来ないことは、外国語でも出来ないので、ただ語学力が上がっても、別に面白い事は特に起こらない。世間話をするだとか、外国人とつきあうとか、「罪と罰」をロシア語で読めるとか、ちょっとしたシステムの説明が出来るようになるとか、すこし風変わりな珍しいしごとをするとか、そういうことが実現するだけ。一方、もしも、外国語で伝えたい強い想い、どうしても実現させたいことがあれば、この先がとても楽しくなる。語学力を維持したいと思えるような、自分の中の秘密のプロジェクトがあると、語学が上手くなったも同然。言葉が次々と面白い出逢いをもたらし、時に大きな悩み、時に大きな喜びに触れる。

ロシア語の学習において、一つ言えるのは、この大変複雑な文法を根気よく学ぶことである。初めは、基本的文法は日本人に教わるとよい。文法の概念を母国語で理解しておけば、のちに、ロシア語でも日本語でも文法の学習の継続が可能になる。文法さえ分かっていれば、読解はなんとかなる。語彙が非常に多いので、そこはあきらめる。あきらめて、淡々と覚えるしかない。

振り返れば、大学でロシア語とロシア文学を専攻したことは、その後の職業人生における長くも良き修業時代の始まりであった。やはり若い頃に始める、ということは一つのアドバンテージのように思う。今では考えられないような、良い先生が沢山おいでで、過ちをねちねちと責める人や競争心をむき出しにする人間は皆無であった。やはり、楽しく学ぶことで、上達がはやくなるのは間違いない。辛い学習は、出来るだけ楽しくやるようにすることも大事なのではないかと思う。

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